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2010年08月25日

巻き貝 その1

田んぼの中を覗いてみると、小さな巻き貝を目にすることがある。
大抵サカマキガイかヒメモノアラガイだ。

サカマキガイは熱帯魚ブームで世界中に広がり、最も良く見られる水生巻き貝になってしまった。
水の汚れに強いため田んぼに肥料を入れすぎているようなところにも見られる。
ヒメモノアラガイは比較的汚れにも強い種だが、サカマキガイほどでもない。

メダカのがっこう事務局の循環式田んぼで調べたところ、台所排水で汚れているところにはサカマキガイが多く、水が澄んで溶存酸素が高くなってくるにしたがいヒメモノアラガイの方が増えてきた。
だからヒメモノアラガイが見られる田んぼは、昔ながらのヘイケボタルが棲めるような田んぼとも言える。
サカマキガイが田んぼに増えていると言うことは、収量を獲ろうと欲張りすぎて肥料を沢山入れ、水を汚しているのではないか?
この二つの貝を知ることで、田んぼの水の状態も判ってしまうんだ!

一見似ている両者だが、よく見るとかなり違う。
特に、以下の3つを覚えておこう。
1:貝の巻き方が逆。殻の頂上から右巻がヒメモノアラガイ、左巻がサカマキガイ(逆巻貝)。
2:触覚の形が違う。ヒメモノアラガイは三角。サカマキガイは紐状。
3:裏から見ると足の形が違う。サカマキガイは黒くて後ろが尖っている。
 
生きもの調査担当 林 鷹央

写真:ヒメモノアラガイ(左)とサカマキガイ(右)比較
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2010年03月15日

生きもの調査に行こう!

生きもの調査って何でやっているの?何を数えているの?とよく聞かれます。

メダカのがっこうの一番の特徴は生きもの調査をすることなのかも知れません。
「食の安心安全」という人間側だけの都合ではなく、いのちの視点で農業を見つめ、2千年以上も生態系の一部として人々の暮らしや文化、自然を支えてきた「農家」という職を後世に伝えていくことが大切だと考えています。

都会の人々と農家を結ぶ共通用語が「生きもの」です。
生きもの調査で一番大切なことは、いのちにまなざしを向けることだと思います。
当初は農法に生きものを結びつけたり、数値で表して有機農業の正しさを証明するといったことにも力を注ぎました。
しかし「人間の利益になるからこの生きものが必要だ」「これば害虫だ」となりかねません。
もっと広い視野でいのちの田んぼを見てみると、稲を食べるでもなく、害虫と呼ばれる虫を食べているわけでもない只の虫の存在に気が付きます。
それらを含めた多様性を見る目こそが、農薬に頼らない農業を成功させ、消費者にはいのちを育む農作物を見分ける力を与えてくれます。

生きもの調査の内容は季節によって違います。
いつ行っても旬な生きものに出会うことができます。
日本の四季と農家の愛情を感じに出かけませんか?

林 鷹央

旬な生きもの時期目安(別表)
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2010年01月01日

田んぼの狩人(ハンター)たち

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コクロアナバチ
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ベッコウバチ
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クモを狩るベッコウバチ
 田んぼの狩人と聞いて思い浮かべる虫は何かな?
タガメやゲンゴロウ、クモやカマキリ。

 あまり知られていないけど、夏から秋に生きものいっぱいの田んぼで佇んでいると、忙しく飛び回っている虫がいることに気付く。
良く見ると黒いハチで、スズメバチぐらい大きいのがクロアナバチ、小型の方がコクロアナバチだ。
小さな体で地中深く(1mくらい)にまで穴を掘り、キリギリスの仲間を狩って卵を産み付け、幼虫の餌にする。
以前紹介した小柄で身体が軟らかいササキリの仲間などは格好の餌食だ。
写真のコクロアナバチは、ウスイロササキリに抱きつき、穴に入れるのに邪魔になる長い触覚を噛み切ろうとしていた。

 またベッコウバチの仲間も良く見られる。
こちらは自分よりも大きなクモを狩る。
わざわざ何で強いクモを狙うのか不思議だが、それに負けないだけの武器として、飛行能力、大顎、麻酔針、そして大きなクモを引きずって運ぶための丈夫な脚を持っている。
田んぼのハンターたちの子どもが地下に眠っていると思うと、冬の田んぼ周辺にも生命が充ち満ちているように感じられる。

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2009年11月01日

秋の田んぼでバッタを観よう

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 田んぼは田植え、草取り、稲刈りの時は街のファンたちも押しかけてとても賑やかだ。
しかし稲刈りが終わると田んぼにはパッタリと人が訪れなくなり、来るのはメダカのがっこうの生きもの調査隊くらいだ。
稲もなくなり寂しく見えても、生きものいっぱいの田んぼならバッタを観て楽しめる。

 2009年10月に佐原の田んぼを調査をしにいった。
大型のショウリョウバッタは残念ながら時期が終わってしまって観られなかったが、オンブバッタやイナゴ類、大きなトノサマバッタも観られた。
冬水田んぼにしてある椿さんの田んぼでは、湿ったところが好きなハネナガヒシバッタが、秋に田んぼを訪れた人に驚き、水に飛び込む姿も。
イナゴは稲の蘖(ひこばえ)を食べて暮らしているようだ。 
 畦に草を残してくれている田んぼでは、蘖や畦草にクサキリ、クビキリギス、ウスイロササキリといったキリギリスの仲間も観察できる。
下から見ると口の部分が口紅を塗ったように真っ赤で、その名の通り「首斬りギス」だ。
クサキリは良く似ているが、頭がクビキリギスほど尖っておらず、“口紅”もほとんど無い。

 彼らを見ているとまるで稲や田の草たちが生きものに姿を変えて跳んだり歌ったり(鳴いたり)しているような気持ちになる。
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2009年09月01日

事務局田んぼのヤゴ調査

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■ グラフ 2009年夏 トンボ羽化推移
■ ウスバキトンボ(橙色)、オオシオカラトンボ(青)、シオカラトンボ(水色)、モノサシトンボ(黒)、不明(赤) 

2009_9nukegara.jpg 武蔵野市吉祥寺にあるメダカのがっこう事務局の田んぼを作って4年目。
田んぼから沢山のトンボが羽化していることに気付いた中村理事長は、家族と事務局の田中さんの協力を得て、ヤゴ殻集めを始めました。
集めたヤゴ殻を種類別に分類し、数えた表を作ってみた。

 驚くべきは、水温が4℃以下では死んでしまうため、東京では羽化しないと言われていたウスバキトンボが多数出ていることだ。
去年までは見られなかったのに、ずいぶんと気候が暖かくなったようで、グラフを見るとウスバキトンボの羽化は前半2週間に集中し、後半はパッタリと出なくなっている。

 最も目立ったのはオオシオカラトンボ。
その他にシオカラトンボやモノサシトンボも羽化している。
街中のこんなに小さなスペースから、沢山のトンボが旅立っていく。
昔の農薬が撒かれる前の田んぼはさぞかしトンボが多かったことだろう。
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2009年07月01日

水生カメムシ(大型、中型)

 農薬を使用しない田んぼで草取りが始まる季節は、水生昆虫たちの現れる時期でもある。
中でも田んぼを代表する大型、中型の水生カメムシは子どもたちにも人気が高い。
昔はどこにでも見られたタガメを筆頭に皆、相手の体液を吸う肉食性。
だから生きものいっぱいの田んぼが必要なんだ。
タガメの好物を卵からかえって〜成虫までの過程で見てみると、ユスリカの幼虫等→ヤゴや魚の子ども等→ドジョウ、フナ、カエル等と身体の大きさに合わせて捕らえられる獲物が変わってくる。 

 他の虫たちの好物(成虫時)も見てみよう。
タイコウチはメダカが大好きだ。
メダカが居るような土水路が残っているところで見かけることが多い。
大型のヤゴなども食べてしまう、タガメの次に強い水生カメムシだ。
 ミズカマキリはオタマジャクシや大きめのユスリカ、メダカ、マツモムシなんかも食べている。
 コオイムシは形はタガメに似ているけど、ずっと小さい。
ユスリカ幼虫やメダカ、小型のヤゴなどを好む。
また、手先が器用なので、モノアラガイやサカマキガイのようなツルツルで掴みにくい生きものの体液を吸うことも出来るんだ。
 マツモムシは主に水面に落ちた虫などを食べている。
でも水中でメダカや魚の稚魚を捕らえたり、小型のゲンゴロウやミズスマシも食べたりする。

さてクイズです。
@〜Dまでいくつ名前が判るかな?
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→答えはコチラ
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2009年05月01日

ハクセキレイ、セグロセキレイ、キセキレイ

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ハクセキレイ
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セグロセキレイ
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キセキレイ
 鳥と言えば空を飛ぶ姿を思い浮かべますが、田んぼを所狭しと歩き回る鳥がいます。
セキレイの仲間です。
一番よく見かけるのがハクセキレイ。
街の中や、学校の校庭、冬にカラカラに乾いてしまうような基盤整備された田んぼでも見られます。
素早く歩きながら尾羽を上下にピコピコと動かします。
チチチッと泣きながらヒヨドリのように波打って飛ぶので、すぐに分かります。

 パット見では分からない紛らわしい鳥がセグロセキレイ。
顔の黒い部分の割合が違うので写真を良く見てくださいね!
でもこちらはなかなか見られません。
水辺が好きなようで、近年田んぼから姿を消しつつある鳥です。
しかし1年中水をはってある冬水田んぼに行くと見ることが出来ます。
鳴き声がハクセキレイより濁っているので、人に気付いて飛び立つときの声を聴けば分かります。

 さらにキセキレイというのもいます。
喉から腹、お尻にかけて黄色が入っているのですぐに見分けが付きます。
ハクセキレイ、セグロセキレイとも2羽以上で見ることが多いのですが、縄張り意識が強いキセキレイは大抵1羽でいます。
また、流れのある水路や小川も好むようです。
ですから人間の都合のみで水路の水が止められ、カラカラに乾いた基盤整備された田んぼではまず見ることはないでしょう。

 花まる農家の田んぼで3種が見られるのは栃木県にある水口博さんの田んぼ。
今度訪ねたときは是非セキレイの仲間たちにも眼差しを向けてみてください。
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2009年03月01日

稲刈り後の田んぼの生きものたち

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チュウサギ
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クビキリギス
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アマガエル
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シマヘビ
 稲刈りが終わると田んぼに誰も来なくなってしまうため、生きものがいないイメージがあるが、実際のところはどうなのか?
生きものいっぱいの無農薬田んぼを見てみよう。

 先ず稲刈り直後の田んぼを見てみよう。
隠れ家を失い姿が露わになったカエルやバッタ、徘徊性のクモたちが目に付く。
冬眠に向けてクモやコオロギなどを食べるので、カエルが1年の中で最も太っている時期だ。
またそれらを狙ってチュウサギやシマヘビが田んぼに集まってくる。
まさに食欲の秋だ!

 最も目立つのがアマガエル。
稲刈り前と違い、土に似せたり、藁に似せたりと様々な体色変化を見せてくれる。
バッタ、コオロギ、キリギリス類も翅(はね)が生え揃い、成熟した姿で美しい虫の声を聴かせてくれる。草がある程度生えている畦ではオンブバッタやクサキリ、クビキリギスなど、葉っぱそっくりの羽を持つ虫たちも見られる。

 稲刈りが終わった後も生きものたちに場を提供してあげられる農家が増えたら、トキやコウノトリたちも棲みやすくなるだろう。

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2009年01月01日

トキ放鳥〜その後

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 冬水田んぼに助成金が付くずっと前から無農薬・無化学肥料で田んぼに水を張るトキの田んぼを守る会の農家、78回も佐渡に通い交流と生きもの調査を続けていた根本副理事長、冬水田んぼを佐渡に持ってきた岩渕先生。
その他メダカのがっこうからも多くの関係者が見守る中、皆の予想に反して、初めて飛ぶ野外で空高く舞い、見えなくなった10羽のトキ。
連日その行動がニュースを賑わしている。
しかしトキたちの今後についていくつか心配事もある。
 
 先ず驚いたのは、背中に識別のためのペイントと発信器を付けていることだ。
試験放鳥とはこういう事なのだろうか?
望遠で撮った写真をみてギョッとした。
ペイントはトキ本来の美しさを消してしまうので残念。
また、背中に付けている発信器は、日常生活の邪魔、特に繁殖行動時において邪魔になるだろう。
金属を背負っているわけだから、落雷しないのだろうか?と心配になったりもする。

 野生復帰が目的の放鳥。
自力で餌を採り、塒(ねぐら)を探す。
我々に出来ることは環境を守ってくれている農家を応援することだろう。
人の営みが自然と調和することで何千年も保たれてきた生きものいっぱいの田んぼ風景が甦ることを祈って。
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2008年11月05日

佐渡にコウノトリ飛来 ― トキ放鳥後に思いを馳せる

 コウノトリは田んぼに現れる鳥の中ではおそらく最大だろう。アオサギよりも一回り大きく、羽根を広げると2mにも達する。遠くから見ると、餌を探している姿はまるで草取りをしているお婆さんのようでもある。

 今年、トキ放鳥前の佐渡島に野生のコウノトリが現れて話題を呼んでいるが、メダカのがっこうスタッフも遭遇、撮影に成功した。無農薬で水を張る田んぼが増えたために飛んで来たようだが。どこで餌を採っているかと思ったら、水田内水口のコンクリートで囲まれたポンプの水たまりを漁っていた。早速我々も同じ事をしてみたところ、ドジョウやヒメゲンゴロウなどが網に入ってきた。

 「よし、これならトキも大丈夫かも」と一瞬思ったが、トキはコウノトリのように脚や首が長くないので、ポンプの周りで餌を捕るのは難しそうだ。

 それにしてもタイミングが良すぎる。トキとコウノトリが同時に暮らす、日本の原風景が佐渡に甦るなんて! コウノトリやトキを国内で野生絶滅させたのは人間だ。人口60億以上に対してコウノトリは数千羽、トキは数百羽しか生き残っていない。償いの意も込めて、新たな農業、街づくりが始まることに期待したい。

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佐渡の田んぼ周辺を歩き回るコウノトリ。
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空を飛ぶコウノトリ。首を伸ばして飛ぶので、サギ類とは容易に区別が出来る。
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トキの全身像。コウノトリのような長い首や脚はない。

posted by hayashi at 23:25| 田んぼの生きもの | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
 
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